高音質な商品が多く登場している完全ワイヤレスイヤホンの市場。 今回は最新の「aptX Lossless」に対応。TAKU INOUE氏のチューニングによって低域再生を重視した「ANIMA ANW02」をレビューしてみよう。
- Acoustuneが本気で作ってきた完全ワイヤレスイヤホン
- ANW02を聴く!イノタクチューンとaptX Losslessはいい音でEDMを気持ちよく聴ける最強のワイヤレスイヤホン
- 連続14時間再生の電池持ちは優秀だが、ノイズキャンセリングがない点が惜しい
Acoustuneが本気で作ってきた完全ワイヤレスイヤホン
ANIMA ANW02はANIMAのブランドで展開される商品だ。これはAcoustuneの完全ワイヤレスイヤホンのブランドとなっており、ANW01の頃からサウンドには定評があった。
また、サウンドチューニングには引き続き音楽家のTAKU INOUE氏を起用。低域再生にフォーカスを当てたサウンドとしつつ、最新の技術を惜しみなく投入したフラグシップがANW02だ。
パッケージは一般的なものだ。カラーは今回レビューのブラックとホワイトの2色展開となる
ANW02のデザインはAcoustuneのイヤホンで見られる意匠も採用された。一見装着感が悪そうに見えるが、綺麗に耳に収まる。
このイヤホンは「ANIMA Studio」アプリから各種設定やアップデートが可能だ。イコライザーの変更や音声アシスタントのCVを変更することもできる。
ANW02を聴く!イノタクチューンとaptX Losslessはいい音でEDMを気持ちよく聴ける最強のワイヤレスイヤホン
ANW02のサウンドハードウェアとしては、10mm口径のダイナミックドライバーを採用している。振動板には専用設計のEl-CoClear(エル-コクリア)と称するものが使われている。
El-CoClear振動板は、Acoustuneの独自技術である「Mylinxドライバー」の開発で培った知見をもとに、新開発されたものとなる。同社の有線イヤホンの設計で培った技術や知見をもとにANW02用に設計されたものだ。
本体の対応コーデックはSBC/AAC/aptX/aptX Adaptive(24bit/96KHz)のほか「aptX Lossless」やLE Audioにも対応した機種となっている。もちろん、Snapdragon Soundに準拠したハードウェアとなる。
aptX Losslessは名の通り16bit 44.1kHzのCD音源をロスなく再現できるもので、Snapdragon Sound内の機能の一つとして利用できる。コーデック上はaptX Losslessとなり、あくまで伝送モードの一つとして用意される。
LE Audioは次世代コーデックとも言われるもので、その基本となるLC3に対応する。これから対応機器が増えていくものとなるため、陳腐化しにくく安心して利用できる。
ANIMA ANW02ではTAKU INOUE氏がチューニングしたサウンドがプリセットされており、「Late Night」「Twilight」「Dawn」の3つがある。リファレンスはLate Nightとなっており、Twilightはやや上の帯域の主張を強めたもの、Dawnは低域の角を丸めたチューニングとしている。本レビューではデフォルトの「Late Night」の設定で試聴する。
今回のレビューにて使用するスマートフォンはソニーのXperia 1 Vだ。aptX Adaptive/Lossless対応はもちろんのこと、ハイレゾストリーミングのビットパーフェクト再生、Buletooth機器でもアップスケーリングのDSEE Ultimateや各種イコライザーが使用可能な点からチョイスした。
試聴曲は以下の通りだ。
Hotel Moonside/速水奏(CV.飯田友子)
トアルトワ/東雲和音(CV.天音みほ)
Again/Kizuna AI
スロウリグレット/田所あずさ
いつものです。
ANIMA ANW02を聴いてみると、低域の心地よさはもちろんのこと、予想とは裏腹の解像感の高さとサウンドステージの広さが特徴的だ。今回の試聴曲はサウンドチューンを担当したTAKU INOUE氏の楽曲を中心にピックアップした。
最初に聴いたのは「トアルトワ」だったが、心地の良い低域に"にやけ“が止まらない。低域の表現、音の捌きっぷり、ボーカルが刺さると言った感覚はなく、この音を左右独立型で鳴らせたら文句なしと言える。
続いて「Again」と「Hotel Moonside」を続けて聴いてみる。心地の良い低域とボリュームを上げても低域に埋もれたり高域がうるさくならない点は気持ちが良い。アタックだけでなく沈み込みもしっかり出てくるので、芯のなさは感じられない。
「スロウリグレット」では音の解像感の高さも感じる。ボーカルや楽器にトゲのない聴きやすいチューニングとなり、大口径ドライバーユニット特性のいいところをうまく生かしたものと言える。
ここまで聞いて感じたことは、EDM特化まではいかないが、この手のジャンルの楽曲がかなり気持ちよく聴ける製品となっている。楽曲の芯となるビートがしっかり出せるハードウェアはもちろん、音楽家のチューニングということもあってほかの製品とはアプローチが違う点もいい方向に作用しているポイントだ。
チューニングを担当したTAKU INOUE氏の楽曲と言えばアイドルマスターシリーズなどのイメージが強いので、上記の試聴曲のようなものと相性が良いと感じられる方もいることだろう。
ただ、実際のサウンドは低域再生にフォーカスを置きながらも低域を過度に攻めたチューニングではないため、幅広いジャンルに対応できるものだ。筆者がこの他にも聴いて好印象だった楽曲は以下の通りだ。
WA DA DA (Kep1er)
オーサカトーキョー(EXILE ATUSH×倖田來未)
スノウ・グライダー(Run Girls Run!)
Dancing Raspberry(5yncri5e!)
Gimme×Gimme(八王子P×Giga ft.初音ミク・鏡音リン)
連続14時間再生の電池持ちは優秀だが、ノイズキャンセリングがない点が惜しい
ここからはサウンド以外のところも見ていこう。ハードウェア的な特徴として、IP56の防水に対応する点、aptX HD Voice準拠の高音質通話が可能な点がある。
また、本体だけで連続14時間再生を可能にする電池持ちの良さも大きなアピールポイントだ。防水については他社製品より等級が高いことから、より安心して利用できるものとなっている。
バッテリー持ちに関しては実際に利用していてもかなり良い部類となっている。多くのイヤホンを利用してきたが、公称値で10時間を超えてくる製品は体感的にも他社製品より大きな差があると感じる。
また、充電ケース併用で42時間の再生が可能となっており、国際線長距離フライトでもしっかり利用できる製品だ。
ケースはやや大きめだが、カラビナを付けられたりするなど特徴的なものだ。ワイヤレス充電にも対応する。
さて、そんなANW02の惜しい点は、価格の割に機能が少ない点だ。確かにAcoustuneが本気で作ってきたワイヤレスイヤホンで、音質特化ともいえる構成なので理解できなくは無い。
一方で、競合となるTechnics EAH-AZ80やAVIOT TE-Z1PNKなどでは、高いサウンドクオリティだけでなく、ノイズキャンセリングなどの付加機能もしっかり備えている。
ANW02では外音取込み機能こそあるが、ノイズキャンセリング機能は備えない。その分長時間再生を売りにしているため、ここはトレードオフと考えたいが実売3万円クラスの製品としては物足りなさはある。
もうひとつ惜しいポイントは「最大限に楽しめる機種が少ない点」となる。aptX Losslessは対応機種がかなり少なく、Snapdragon Sound対応と言っても現時点での対応機種はSnapdragon 8 Gen 2並びに8 Gen1世代のハイエンドのみと言ってよい。そのため、日本で発売された機種で使える機種(記事執筆時点)は以下のものだ。
ASUS
Zenfone 9/ROG Phone 6/7nubia
REDMAGIC 8 Proシャープ
AQUOS R7/Leitz Phone 2AQUOS R8 pro/AQUOS R8
ソニー
Xperia 1 V/Xperia 1 IV/5 IVXiaomi
Xiaomi 12T Pro
他にもあったら教えてください…
思いつくものを書き出したが、日本では10機種前後しか出ていない。もっとも、aptX Adaptiveに対応している機種であれば、ハイレゾ相当のクオリティで楽しむことができる。
ANW02の高音質を最大限に楽しむにあたって、お手持ちのスマートフォンや音楽プレイヤーがaptX Adaptiveに対応してるか確認しておくと良いだろう。それ以外ではBluetoothチップだけ別実装の機種であれば利用可能なものもある。ただ、スマホメーカーや機種によって対応してない例もあるので最新機種でも注意して欲しい。
さて、完全ワイヤレスイヤホンの最大の特徴は、手軽に利用できること。強力なDSP処理によって、今までとは異なるアプローチの製品を作り出せる点だ。ANW02ではサウンドハードウェアを強化した上で、対応コーデックも最新のもので固めてきた。これに加えてTAKU INOUE氏のチューニングによって、最強クラスのEDMに強いワイヤレスイヤホンとなった。
最後になるが、ANW02のサウンドは高音質リスニングに興味がある方はもちろん、EDMジャンルを中心に聴かれるリスナーに強くおすすめしたい製品だ。楽しく聴けるという面でも非常に良くできた製品だ。既に多種多様なイヤホンをお持ちの方にも是非聴いて頂きたいところだ。
価格は実売で3万円前後と安価な製品ではないが、EDMリスナーやアニソンを中心にして聴くリスナーなどターゲットとしている客層には刺さるような製品だ。ノイズキャンセリングは備えないが、他社製品よりも圧倒するバッテリー持ちの良さは特筆する部分がある。
市場には様々な製品が出ているだけあって、このような形で差別化するのは面白いと感じた商品だ。筆者としては綺麗にハマった製品だけに今後もチェックしたいものだ。