ソニーは9月20日。最新スマートフォンの「Xperia 5 V」の価格、取り扱いキャリアを発表した。取扱キャリアはドコモ、au、楽天モバイルのほか、メーカー直販版も展開される。展開カラーはブラック、ホワイト、ブルーの3色となるが、取り扱いキャリアによって異なる。
ソニー直販モデルはストレージ256GBの仕様で13万9700円となっているが、キャリア版はストレージが半分の128GBとなる。ドコモや楽天モバイルでは価格が15万円を超える設定となるなど、ネット上では「高価だ」と物議を醸すものとなっている。
ドコモ:15万1690円
au:14万1300円
楽天モバイル:15万2400円
ソニー直販:13万9700円(256GB)
参考:香港直販 7499香港ドル(税抜13万9000円 256GB)
Xperia 5 Vの価格を見ると、キャリア版の価格の高さが目立つものとなっている。今回はソフトバンクが取り扱わない関係で、ドコモと楽天モバイルの価格の高さが際立つものとなった。
これらキャリアの価格は返却プログラムを使う前提の価格設定となっている。どのキャリアも共通して2年後に返却すると、実質負担額は約7万円前後の設定となり、比較的お得に利用できるとしている。
その一方、日本のスマートフォンの平均利用期間は4.4年と言われており、返却しないで利用する場合は3から4年の分割契約で購入する方も少なくない。その場合のトータルの支払い金額は上記のものとなるため、キャリアのアピールするお得感は失われてしまう。
また、 auについてはXperia 5 Vを全色オンラインストア限定での取り扱いとしている。そのため、携帯電話の販売チャネルの約7割を占めるキャリアショップと家電量販店では取り扱わない形となった。
この中では最も安価な直販版の13万9700円という設定は、iPhone 15の同容量の価格である13万9800円(ストア版)をかなり意識したものであることが伝わる。確かにストア版の iPhone と同等の価格であれば検討してみようと感じるユーザーはいるはずだ。
ハイエンドスペックを備えながらもカジュアルでコンパクトが売りの「Xperia 5」シリーズ。今作では日本向けイメージキャラクターにアイドルグループ「NiziU」を起用するなど、特に若い層をターゲットにした製品となっている。
ソニーとしても、この製品は若いユーザー層に対して「体験」で差別化を図ったスマートフォンとしている。高音質な音楽に触れる体験、思い通りに動画を撮影できる体験。発表時の動画でも、それらの体験が「自分らしさ」と言ったところにフィーチャーすると言った意味が込められているようだ。
そのような体験というカタログスペックで表せないところをPRキャラクターのNiziUのメンバーにアピールしてもらったり、若い世代のクリエイティビティを発掘するビデオコンテンストなどの開催、東京ゲームショウなどでのゲーミング体験の展開などでXperiaの魅力をアピールする方向となっている。
Xperia 5 Vの魅力をNiziUのメンバーより発信してもらうスペシャルムービーも公開された
筆者としては、若者向けにアピールするメーカーの取り組みに対して、キャリアの価格がそれに見合っていないように感じる。さすがに15万円を超えると、若い世代でも簡単に購入できるようなものではなくなってくる。
加えて、キャリア版はストレージが少ない上に価格が高いというマイナスイメージも与えてしまっている。キャリア版と直販版の価格を比べても、ストレージ容量が多い直販版が最も安価といういびつな状態となっている
キャリア版の高価な分は各キャリアは回線契約時の値引きに加えて、初回購入でのポイント還元、各種アクセサリーの提供を行っている。その一方で、特典のポイントを本体価格に反映させてその分値下げすることもできたはずだ。
特にキャリア版はストレージが128GBと少ないこともあり、提供価格が定価ベースで12万円ほど(値引きで10万円を切る設定)となれば、若い世代に与える印象は大きく変わってくるはずだ。
実際25歳と一応若者である筆者の視点で見てもXperia 5 Vはお求めやすい価格とは言えない。正直、ターゲットとした若い世代の感想を申し上げるのなら、体験的なところでも視覚的で分かりやすく、長期サポートも確約され、価格も10万円以下とリーズナブルなGoogle Pixelに心が揺らぐのは事実だ。
高価なキャリア版でも7万円台のPixel 7aはTVCMを用いたプロモーションもあり、若い世代にも人気だ
また、Xperia 5 Vはカタログスペックで表せない「体験」を重視するとなれば、それこそ多くの人に触ってもらわなければこのスマートフォンの魅力を発信することは極めて難しいものだ。
筆者も Xperia 1 Vを使用しているので、ソニーが目指したいスマートフォンの形というものは何となく理解できるが、これを一般のユーザーにわかりやすく伝える術が少ないのも事実だ。とにかく触って聞いて体験してほしいとしか言いようがないのだ。
その体験をキャリアの高価な価格によって機会損失してしまうのだ。直販で体験できるソニーストアは都市部にしかなく、体験機会が多いとは言えない。
全国展開のキャリアに関してもauがオンライン専売となり、店頭に並ばないことから大きな体験機会損失になると考える。楽天モバイルも高価な端末を並べる店舗は限られており、実質的なドコモ専売といったイメージを与えかねないような状態だ。
若い世代に体験でアピールしたいソニーの考えに対して、Xperiaという売れ筋の端末でなんとか利益を確保したいキャリアの思惑が感じられる。
そんな注目のXperia 5 Vは10月中旬ごろ発売、直販版は10月27日の発売となる。スマートフォンについては、非常に期待値の高いものとなっているので発売を待ちたい。