スマートフォンにおいて、ゲームに特化した「ゲーミングスマートフォン」と呼ばれるものがある。日本ではASUSのゲーミングブランドを冠する「ROG Phone」が有名だが、Lenovoのゲーミングブランドとなる「Legion」を冠するものも存在する。その最新世代がLegion Y90だ。今回入手できる機会があったのでレビューしたい。
- Legion Y90はSnapdragon 8 Gen 1搭載!今もなお高い性能を見せつける
- 強力なアシストをしてくれるゲーミング機能の数々。デュアルファンの冷却機構も魅力的
- 6400万画素の高性能なカメラは思ったよりも使える。
- 普段使いでも使えないことはないが、ゲーミング特化で少々クセもあるLegion Y90。サブスマホにはアリ
Legion Y90はSnapdragon 8 Gen 1搭載!今もなお高い性能を見せつける
Legion Y90のプロセッサはQualcommのSnapdragon 8 Gen 1を採用している。従来よりも高い性能と省電力化を達成したチップセットだ。ストレージについては256/640GBとなる。UFS3.1規格のものを採用し、高速な読み出しが可能になっている。最上位の640GBのモデルは、SSDストレージをRAID接続する構成となっており、読み出し速度などが向上している。
本体はLegionブランドらしい「Y」の意匠が込められたデザインだ
カメラ配置が独特のスマートフォンだ
空冷ファンを内蔵している
本体側面にはふたつ目のUSB端子を備える
今回のレビューにおいて、パフォーマンスに全く不満を感じない。ひと世代前とはいえ、高性能なチップセットに高速ストレージなこともあり、近年出ている重量級なゲームでも余裕の動作だ。筆者はSnapdragon 8 Gen 1端末はXperia 1IVなども利用しているが、空冷ファンのおかげか比較しても満足のいくパフォーマンスである。
高負荷な原神も快適に動作する。後述する強力な冷却機構に加えて、強力な外部冷却ファンを組み合わせれば高性能を維持したまま本体の発熱もかなり抑えられている。
本体スピーカーはステレオ構成となる。サウンドについてはフロント配列の筐体設計もあってか、スマホのスピーカーにしては音質も良い。前作よりも筐体設計やバスレフポート容積を見直した結果、最大音量は40%大きくなっている。本体スピーカーの音量はより大きくなり、アクティブスピーカーとしても利用できる。
本体バッテリーは5600mAhと大容量のものを採用している。バッテリーセルをふたつに分割し、中央付近にCPUを配置することで、充電制御や熱処理の最適化を図っている。電池持ちについては、従来機と比較して同等くらいの印象だ。Snapdragon 8 Gen 1採用でパフォーマンスは向上したが、空冷ファンなどを強化した結果トントンになっているような印象だ。 実際に原神のようなゲームを2時間遊んだり、30分の動画撮影などを加えても、モバイルバッテリーなしで1日利用できた。
Legion Y90では「ZUI」というカスタムUIを採用している。競合するAndroidスマートフォンよりもカスタム度が高いものになっているが、ベースとなるものはSIMフリー端末で採用例も多い「AOSP」と呼ばれるものになっている。
ホーム画面などはAOSPに近いものとなっており、クセは少ない。
強力なアシストをしてくれるゲーミング機能の数々。デュアルファンの冷却機構も魅力的
Legion Y90はゲーミングスマートフォンとあるだけあって、ゲーミングにまつわる機能は充実している。まず、画面についてチェックしてみる。144Hzのリフレッシュレートに対応したディスプレイを採用している点だ。それでいながら、ピーク輝度1300nitと比較的明るい点も特徴だ。
ディスプレイは6.92型AMOLEDとなり、解像度はFHD+となる。サムスン製のE4 AMOLEDを採用している。720Hzのタッチサンプリングレートのほか、HDR10/10+の色彩制度などをサポートしている。
画面は6.92インチと大画面だが、直射日光下ではやや見にくい場面もあった
専用のゲーミングモードについては、エイムアシストといった機能を設定、管理可能だ。ゲーミングスマートフォンらしい面白い機能が備わっている。また、本体側面には超音波センサーとなるトリガーを備える。左右に2つずつ備える構成となり、より細やな設定も可能だ。
ゲーム時は横から各種メニューや設定を呼び出せる。
スクリーンのタッチ感度の調整の他、GPUのアンチエイリアス精度をハードウェアレベルで調製できる。
本体側面にL/Rトリガーを備える
そしてLegion Y90もとい、Legion Phoneと言えば、吸気と排気にそれぞれファンを使うデュアルファンの構成だ。世界的に見ても稀なもので、唯一無二と言ってもいいものだ。 合わせて、大型のベイパーチャンバーも備えたことで、空冷ファンと合わせて効率的な冷却が可能だ。
Y90では構成が一新され、ファンは本体上部にまとめられた。空気の流れがUの字になったと考えれば良いだろう。
6400万画素の高性能なカメラは思ったよりも使える。
このLegion Y90では2眼のカメラを採用している。カメラのスペックは以下の通りだ
メインカメラ:6400万画素 f1.9
超広角カメラ:1300万画素 f2.2
フロントカメラ:1300万画素
ゲーミングスマホとしてはカメラ性能を強化したLegion Y90
以下Legion Y90での作例となる。基本的にオートで全て撮影している。
ここまではデフォルトの広角での作例となる。センサーのスペックもさることながら、Snapdragon 8 Gen 1の高い性能もあって思ったよりも綺麗に撮れている。
超広角カメラについてはそこそこ撮れるが、基本性能が低いため夜間で使うのは厳しそうだ。
暗がりでは見た目よりやや明るめに撮れる印象だ。オートで夜景モードになったが、色はそこそこ再現出来てる模様だ。
動画撮影については光学式手ぶれ補正を備えないため、少々厳しいように感じた。本体も252gと重量があるため、持ちにくく重たいという印象も感じた。
また、フロントカメラは前作と異なり、本体ベゼルに埋め込まれた。電源ボタン部をポップアップカメラにする構成は不評だったという意見もある。
普段使いでも使えないことはないが、ゲーミング特化で少々クセもあるLegion Y90。サブスマホにはアリ
Legion Y90はゲーミング機能に特化したスマートフォンとなっている。特段ゲーミングスマホらしい操作周りのクセは抑え目となり、通知周りはゲーミングモードにしない限りは普通に利用できる。加えてカメラ性能も以前に比べると向上しており、ゲーミングスマホながら比較的綺麗に撮影できるものとなった。
もちろんゲーミングスマホらしい要素も備えており、ちゃんと本体は光る
その一方で、横画面利用を前提としたカメラ配列や、空冷ファン搭載ゆえに防水性能を備えない点が惜しいところとなる。カメラ配列はLegion Phoneの流れを汲んだ真ん中の配列となっており、縦持ちではやや使いにくい点は否めない。
これでも従来よりカメラ周辺の出っ張りが抑えられており、縦持ちでも持ちやすいものにはなっている
最後になるが、Legion Y90の価格面は12/256GBの構成で約7万9800円、18/640GBの構成では約12万円となっている。他社製品と競合する関係もあって、価格ではかなり攻めた構成となっている。LenovoはLegionシリーズにおけるスマートフォンの展開を終了するという報道も出ている。最後発なだけあって、他社にはない独創的なプロダクトで挑んだゲーミングスマホの市場だが、難しいものがあったようだ。
筆者としてはこのスマートフォンを手にして、今現在における究極のゲームエクスペリエンスを体験して欲しい。