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NuraTrue Pro レビュー 究極のパーソナライズとaptX Losslessコーデックが織りなす「次世代の高音質イヤホン」

 高音質な商品が多く登場している完全ワイヤレスイヤホンの市場。Noble Fokus MistiqueやFiio FW5などの従来のイヤホンの考えで最高音質を突き詰めるもの、Final ZE8000のように全く新しいアプローチでリスニング体験を提供するものなどがある。

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 今回はフルパーソナライジング、世界初の「aptX Lossless」対応。「誰でも最高の音」を提供することに特化した「NuraTrue Pro」をレビューしてみよう。最後の方では同技術を利用したDENONの「PerL Pro」についても記述する。

 

 

ひとりひとりの耳を解析して最適化。音がパーソナライズされる「次世代の高音質イヤホン」

 

 NuraTrue Proはクラウドファンディングサイトにて昨年から注目をあつめ、CAMPFIREにて目標資金の50倍の出資を獲得するなどした商品だ。

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 このイヤホンで使われている音響パーソナライズ技術は、耳音響放射を計測して行われる。特定の音をイヤホンから出力し、耳音響放射をイヤホン内のマイクで検出するものだ。
 これはOAE検査と飛ばれるものと同様の仕組みで、新生児のほか精密な聴力検査でも行われる手法だ。

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イヤホンの音が出る側にもマイクが備わっていることがわかる。

 


 このイヤホンでは、初回装着時に簡易的な聴力検査を行う。これにより聴感的に落ち込んでいる帯域を補正し、最適化済みのプロファイルを作成するものだ。Trueの名のごとく、本来のリスニング体験を可能にしている。同社では過去にも音響最適化を行うイヤホンやヘッドホンを展開している。

 

 また、大きく触れられていないが、再生時の外耳道の共鳴特性に対する補正もある程度行われている。イヤホン使用時は、一般的な耳で音を聞くメカニズムと異なるため、耳の中では本来は存在しない共鳴特性が発生するという。

 

 これをマイク等で検出し、補正することでイヤホンリスニングにおける「違和感」を低減させることが可能だ。この機能はHuawei Freebuds Pro2などで採用されており、耳道の長さや形状に応じて常に最適化を行うなど次世代感もりもりの機能となっている。

 

 また、上記のプロファイルと合わせて使用することで、理論上は聴覚や外耳道の個人差をほぼ考慮しなくてよいリスニング体験が可能となる。 そのため、商品の発想から音作りまで従来のイヤホンとは違うものになる。DSP処理をふんだんに生かした「次世代のイヤホン」と言えるものだ。

 

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NureTrue Proのデザインは円形の部分が目立つものだ。一見装着感が悪そうに見えるが、イヤーハンガーの組み合わせで適切なフィット感を演出できる。


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このイヤホンは「nura」アプリから最適化、各種設定やアップデートが可能だ。もちろん、外音取り込み機能、ノイズキャンセリングも備える。高音質だけでなく、機能性もしっかり有する商品となる

 

究極のパーソナライズとaptX Losslessで成せる「最高音質」NuraTrue Proを聴いてみる

 

 NuraTrue Proの構成は10mm口径のダイナミックドライバーを採用している。これ以外にオーディオハードウェアとしてめぼしいものはない。
 本体の対応コーデックはSBC/AAC/aptX/aptX Adaptive(24bit/96KHz)のほか、世界初の「aptX Lossless」にも対応した機種となっている。

 aptX Losslessは名の通り16bit 44.1kHzのCD音源をロスなく再現できるもので、Snapdragon Sound内の機能の一つとして利用できる。コーデック上はaptX Losslessとなり、あくまで伝送モードの一つとして用意される。


 今回のレビューにて使用するスマートフォンはソニーのXperia 1 Vだ。aptX Adaptive/Lossless対応はもちろんのこと、ハイレゾストリーミングのビットパーフェクト再生、Buletooth機器でもアップスケーリングのDSEE Ultimateや各種イコライザーが使用可能な点からチョイスした。

 

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試聴曲は以下の通り

 

みちづれ-From THE FIRST TAKE/星街すいせい
「みちづれ」の一発録りバージョンです。ボーカルメインのナンバーに仕上がっています。

みちづれ - From THE FIRST TAKE

みちづれ - From THE FIRST TAKE

  • 星街すいせい
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

music.apple.com


アイドルマスターミリオンライブより 

bitter sweet/豊川風花

bitter sweet

bitter sweet

  • 豊川風花 (CV.末柄里恵)
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

music.apple.com

 

アイドル/YOASOBI
TVアニメ「推しの子」オープニングテーマ曲です。

アイドル

アイドル

  • YOASOBI
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

music.apple.com

 

スロウリグレット/田所あずさ
いつものです。

スロウリグレット

スロウリグレット

  • 田所あずさ
  • アニメ
  •  
  • provided courtesy of iTunes

music.apple.com


 NuraTrue Proは初回のパーソナライズが大切だ。そのため、仮に試聴できたとしてもパーソナライズされていないこの機種ではのっぺりとしたサウンドで「真価」が分かりにくい機種となっている。

 初回のパーソナライズではまずアプリを起動し、指示通りに進めていく。しばらくすると、なにやら聴力検査的なサウンドが流れ出す。その後、いくつかのプリセットが生成されるので、お好みで選ぶとよいだろう。


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パーソナライズ中はこのような画面が表示され、聴力検査が行われる。


 パーソナライズが終わり、aptX Lossless接続で改めて聴いてみる。さっきまでとウソのような解像感の高さとサウンドステージの広さに驚かされる。解像感は全帯域でグッと上がり、かと言って過度な刺さりもない。良質なサウンドに変化するのだ。

 試聴した第一声は改めて「本当にこいつ TWSイヤホンなのか?」という素直な感想とともに、今まで担い体験からか思わず顔がにやけるものだ。 

 友人にもパーソナライズを行って視聴させたが「聞こえなかった音が鮮明に聞こえる」と言った意見もいただき、このイヤホンのすごさを実感した。


「聞こえなかった音が聞こえる。」

 

 この根拠としては、聴感的に聞き取りにくい部分(減衰している部分)をイヤホン側が持ち上げているためと考えられる。この部分は年齢や個人差があるもので、従来のイヤホンでは補正しきれないものであった。

 

 最初に聴いたのは「better sweet」だったが、TWSイヤホンで経験したことのない音に“にやけ“が止まらない。低域の表現、音の捌きっぷり、ボーカルが刺さると言った感覚はなく、この音を左右独立型で鳴らせたら文句なしと言える。ハイゲインモードも備えており、より芯のある低域の再生も可能となる。

 

  続いて「アイドル」と「みちづれ」を続けて聴いてみる。これまたボーカル域の表現がうまく、ボリュームを上げても低域に埋もれたり高域がうるさくならないのが凄いところだ。本当に補正がうまいというべきだろうか。

 「スロウリグレット」では音の解像感の高さを改めて感じる次第だ。ボーカルや楽器にトゲのない聴きやすいチューニングとなり、大口径ドライバーユニット特性のいいところをうまく生かしたものと言えるだろう。


 これ以外にはDIRAC監修の空間オーディオ機能「Dirac Virtro」も備わる。これをオンにすると、広く見通しの良いサウンドステージを体験できる。Xperiaでは「360Upmix」と掛けあわせて利用することも面白い。

 
聴かせたい「本来の音」を作り出す次世代のイヤホン。難点は対応機器と試聴環境の少なさ

 

 TWSイヤホンの最大の特徴は、手軽に利用できること。協力なDSP処理によって、今までとは異なるアプローチの製品を作り出せる点だ。NuraTrue Proはまさにこの部分で最先端を行くイヤホンのひとつとなる。特にサウンドのパーソナライズの要素は、今まで「個人差」で片づけられていた部分にまでテコ入れをしてきたものだ。

 

 音響パーソナライズだけではなく、空間オーディオやノイズキャンセリング、外音取り込みなどの高価格帯の機種で備える機能も備えている。これ以外では、マルチペアリングや操作のカスタマイズにも対応し、充電ケースも無接点充電に対応するなど、近年のトレンドを押さえている。

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本体の付属品はイヤーピース、耳当て、充電ケーブルとなる。

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充電ケースはLEDも備わる。ケース自体はワイヤレス充電にも対応だ。

 

 惜しいポイントは「最大限に楽しめる機種の少なさ」になる。aptX Losslessは対応機種がかなり少なく、Snapdragon Sound対応と言っても現時点での対応機種はSnapdragon 8 Gen.2並びに8 Gen.1世代のハイエンドのみと言ってよい。そのため、日本で発売された機種で使える機種(記事執筆時点)は以下のものになる。

 

ASUS
Zenfone 9/ROG Phone 6

Nubia
REDMAGIC 8 Pro

シャープ
AQUOS R7/Leitz Phone 2

ソニー
Xperia 1 V/Xperia 1 IV/5 IV

Xiaomi
Xiaomi 12T Pro

 

他にもあったら教えてください…

 

 思いつくものを書き出したが、日本では9機種しか出ていない。もっとも、aptX Adaptiveに対応している機種であれば、ハイレゾ相当のクオリティで楽しむことができる。

 NuraTrue Proの高音質を最大限に楽しむにあたって、お手持ちのスマートフォンや音楽プレイヤーがaptX Adaptiveに対応してるか確認しておくと良いだろう。それ以外ではBluetoothチップだけ別実装の機種であれば利用可能なものもある。ただ、スマホメーカーや機種によって対応してない例もあるので最新機種でも注意して欲しい。

 

 もうひとつの難点は、クラウドファンディング発の製品ということもあり、視聴できる環境が極めて少ないのだ。仮に出来ても「最適化」が必要なことで、さくっとスマホを繋いで試聴した程度では、この機種の真価を理解することは不可能だ。

 そのため、仮に試聴しても「微妙だな」という意見で終わってしまい、真の強さである最適化まで辿り着けない方も少なくないと考えられる。これはあまりに惜しい部分だ。


 さて、ここまでNuraTrueProを聴いてきて、TWSイヤホンの音質もここまで来たかと改めて感心させられる。機能面はもちろん、サウンドのパーソナライズという「次世代のイヤホンの形を示した」そんな製品となっている。


 DSP処理をゴリゴリにかけて最適化を行う点では、ある意味Final ZE8000に近い商品だ。ZE8000はメーカーが考える「究極のサウンド体験」に対し、NuraTrueProはここに合わせた「最高のリスニング体験」を提供するハードウェアとなった。

 

 NuraTrue Proのサウンドは高音質リスニングに興味がある方はもちろん、既に多種多様なイヤホンをお持ちの方にも是非聴いて頂きたいところだ。試聴機が皆無で販路も代理店のプリンストンのみになる。価格が4万5800円なことも踏まえ「気軽に体験できる」機種ではないが、今年発売の機種の中でもトップレベルのサウンドクオリティと言える商品になっている。

 

 筆者としてもノーマークだった製品だけに、このサウンドには驚かされた。クラウドファンディング発の製品ゆえにインフルエンサーのレビューが多く、否定的な内容はかなり少ない。消費者としては「持ち上げている」「サクラなのでは?」と思われるかもしれないが、サウンドに関しては書いてきた通りで忖度なしの高品質サウンドだ。

 

 さて、筆者はもうこのNuraTrue Proを手にしてから他の機種には戻れなくなってしまった。高音質をアピールするTWSイヤホンを聴いても、どこか物足りなさを感じてしまう。

 このイヤホンが行うパーソナライズは、数万円の音楽プレイヤーでも体験できない全く新しい音楽体験だ。これだけでも4万5800円という価値はあると筆者は感じる。

 直近では販売終了となり、流通在庫のみとなるようだ。入手性にも難が生まれてしまうものとなったが、音質については現時点で文句なしの製品だ。皆さんにも興味があればぜひ一聴して欲しいイヤホンだ。

 

 

追記:どうやらDENONから似た製品として「PerL Pro」というものが展開されるそうだ。

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 最新のaptX Losslessに対応し、パーソナライズ機能も備える。加えて空間オーディオ機能「Dirac Virtro」にも対応。機能面以外にも本体の形状とかも、何かこうすごくNuraTrue Proみを感じる製品だ。

 

 これはDENONのブランドを所有するMasimoが今年4月にNuraを買収したことに関係しており、既にnuraブランドでの新規取り扱いはしていないという。

 同社は買収時のプレスにて「Nura の最先端技術と、オーディオ業界で確立された Denon の評判との間のエキサイティングなコラボレーションの始まり」としている。今後、Nuraの技術を採用した製品はDENONブランドで販売されることにも触れられている。

 

 そんな折で事実上の後継機というよりは、PerL Proは資本関係が変わったことによるリブランド商品だ。ちなみにサウンドはDENONのエッセンスが加わったことでTrueProとは若干異なるという。

 

 そんなNura TrueProの後継機と言える「PerL Pro」は7月1日の発売で価格は5万1480円とのことだ。Nura TrueProを入手できなかった方には是非チェックしてほしい製品だ。

 

www.hayaponlog.site

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