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Google Pixel 8シリーズの7年間OSアップデート。スマートフォンを長期利用するメリットとデメリットを考える

 Google の最新スマートフォンPixel 8シリーズは7年間のOS アップデート、セキュリティパッチ提供を保証するという「長く使えるスマートフォン」のお手本のような構成で話題だ。

 その一方、ネット上では長く使えることを歓迎する声だけでなく、これを否定的に捉える意見も見かけた。今回はスマートフォンの長期のアップデートというものが本当に必要なのかといったところを考えてみよう。

 

Google Pixel 8が7年間のOSアップデートを提供したことが大きな話題に

 スマートフォンのOSアップデートについて、かねてから消費者にとって大きな話題となることが多い。特にアップデート提供期間は実質的な製品寿命を決めるものであり、かつては一度もOSアップデートが行われず、消費者から反感を買った機種も存在した。

 

 近年では本体の価格高騰や欧州等で叫ばれる環境意識向上といった理由から、スマートフォンの利用期間そのものは長くなりつつある。日本でも政府の消費動向調査における最新のデータにて、平均4.4年利用するというデータが出ている。多くのユーザーは同じスマートフォンを5年近く利用するのだ。


 今回 GoogleのPixel 8シリーズが7年間のOSアップデートを提供すると明言した。これを可能にした要因はやはりOSを自ら開発していること、自社設計のプロセッサー「Tensor G3」を採用している点がとても大きい。

 加えて、米カリフォルニア州の州法にて「100ドル以上のデバイスは7年間の取扱説明書や修理マニュアル、修理用部品、ソフトウェアサポートの提供をメーカーに義務付ける」というものが今年9月より施行されている。これに配慮して長期アップデートになったのではないかという指摘もある。この結果、Pixel 8は民生向けスマートフォンとしては異例となる7年間のOSアップデートの提供が予定されるスマートフォンとなったのだ。

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Pixel 8は7年間のOSアップデートを行うことを発表した

 

7年のOSアップデートは必ずしも歓迎されない。理由は「ハードウェア寿命」「性能の陳腐化」「長期サポートによる値上げ」

 

 さて、今回7年のOS アップデート提供に対して歓迎する声の一方、否定的な意見も少なからず見られた。その最たるものは、製品のソフトウェア寿命よりも先に、バッテリーをはじめとしたハードウェアの寿命が来てしまうのではないかという懸念だ。

 

 確かに、一般的なスマートフォンのバッテリー寿命に関しては、2年間利用すると出荷時の80%の容量まで劣化すると指摘される。多くのバッテリー劣化を防ぐ技術が昨今のスマートフォンには採用されているものの、4年から5年も利用すればさすがに劣化してしまう。


 バッテリーの劣化が進めば交換等の修理が必要となるが、昨今の裏蓋が開けられないスマートフォンのバッテリー交換はiPhoneをはじめ1万円を超えるものも少なくない。Androidスマートフォンの場合、iPhone などに比べると修理店も少ないことから手軽に修理できないといった指摘もある。

 

 筆者としては昨今のバッテリー技術がある程度確立されたスマートフォンの場合、利用に支障きたすほど劣化しているのであれば、ある種買い替えのサインだと考えている。そのようなタイミングでスマートフォンの動作に不満を感じたり、普段利用するアプリの動作が多くなったりしたら買い換えることを推奨したい。

 

 その一方で、修理して使う選択もある。スペックに不満がない、コストを抑えたいなどの理由があれば、新しい機種を買うよりもバッテリーの交換だけで済ませることもできる。7年のOSアップデートが保証されるPixel 8の場合、4年利用してバッテリー交換しても、あと3年はアップデートが提供されると考えれば「買い替え」以外の選択肢も見えてくるはずだ。

 

 これに対してGoogle PixelではiCrackedという修理業者と提携し、日本でもキャリアで販売された機種を含めて正規修理対応ができるようになっている。実店舗は全国に93拠点あり、郵送での修理も可能だ。修理についても、キャリアの保証サービス加入で割引も行われるなど、そのような意味ではiPhoneに並ぶくらい修理対応が手厚いスマートフォンだ。

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iCrackedのバッテリー交換については Pixel 7で1万6000円の設定となっている。今回発売された Pixel 8も概ね同じくらいの価格設定になることが考えられる

 

 Pixel 8では分解しやすい構造を採用しており、消費者が比較的容易に分解修理が可能としている。日本では技適の関係で自己修理は難しいものの、正規の修理窓口が存在し、即日修理可能な点は利用者にとってプラスになるはずだ。

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Pixel 8シリーズは分解修理しやすいスマートフォンだ

 

 

 これと同じくして「7年間スマートフォンを使い続けたら、性能的にも陳腐化するのではないか」という意見も見られた。これについては、お手持ちの機種の性能に不満を感じるようになれば、新機種の検討などを行うものと考える。


 今から数えて7年前のスマートフォンは2016年に発売された機種となる。ここにはApple iPhone 7やGalaxy S7 edge、Xperia XZといった機種があてはまる。確かにこのような機種で原神を遊んだり、高度な動画編集を行おうすればさすがに無理があるようには感じる。

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Xperia XZは発売から7年が経過したスマートフォンだ

 

 その一方で、スマートフォンでゲームなどはあまり遊ばないという利用用途であれば、これらの機種の性能に不満を感じにくい。「壊れないから」「バッテリーを交換したからまだ使える」といった理由で使い続けているユーザーは決して少なくない。

 そのため7年という期間であれば、性能に不満を感じないユーザーがそのまま使い続けるのではないかと考える。その際にソフトウェアのアップデートが行われないことを理由に、利便性が低下してセキュリティ面で問題を抱える可能性がある。それが防げるだけでも、この長期アップデートは意味があるものだと考える。

 

 

 これ以外には費用対効果の低下、本体価格の値上げが指摘された。平均をゆうに超える7年の長期サポートによって、端末価格が跳ね上がっているのではないかという指摘だ。今回のPixel 8シリーズはアメリカで100ドルの値上げとなっており、日本では円安の影響もあって、さらに大きな値上げ幅となった。

 これについては、筆者も同意できるところはある。長期のソフトウェアアップデートや部品のストックを用意しなければいけなくなるため、その分人や設備のコストが増加する形となる。またPixel 8では、単純な製品のアップグレードのほか、単価の高い再生アルミニウム素材を100%使用したり、プラスチックレスの梱包パッケージを採用するなど、端末性能以外のところでもコストかかっている。筆者としては環境負荷に対する差別化の形で、値上げ分は割り切るのが適切ではないかと考える。

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Pixel 8ではリサイクル材を本体に使用したり、プラスチックレスの梱包とすることで環境負荷対策もアピールしている 

 

スマートフォンへ7年間のOSアップデート。これからは社会的に求められる時代か

 

 筆者としては、スマートフォンに対して7年のソフトウェアアップデートは必要なのか?と言う疑問に対し、端末寿命の方が先に来てしまう可能性がある事は同意する。その一方、長期的なOSアップデート、セキュリティアップデートが社会的に求められるのであれば継続的な更新は必要だと考える。

 

 この「7年」という数字はスマートフォンの製品寿命よりも、法令などによってアップデート提供期間が定められたことによる対応という意味合が強いものと考える。アメリカのカリフォルニア州のように、州法にて7年間のソフトウェアアップデート提供を必須とする地域が出ている。このような流れは欧州でも起こっており、過去にはドイツ議会内にて「同国向けに販売されるスマートフォンのセキュリティアップデート提供期間を各社最低7年間にすべきだ」という法案が提出されたこともある。

 

 日本でも前述の通りスマートフォンの平均利用期間は4.4年となっており、この期間未満でセキュリティアップデートを含めたソフト面のサポートが終わってしまう機種に関しては、消費者の平均利用期間よりも先に製品寿命が尽きてしまう形となる。

 

 近年では3年のOSアップデート、5年間のセキュリティパッチ提供といったものが10万円を超えるスマートフォンでは当たり前になりつつある。日本ではApple、サムスン、シャープ、Googleが対応させる方向としており、民事再生法適用前のFCNTが発売した「arrows N」も4年間のソフトウェアアップデートを保証した。これらのメーカーの機種ではセキュリティ的にも4年間は安心して利用できる機種に仕上がっているのだ。

 

 このようなスマートフォンは中古で選ぶ際にも優位になってくる。確かに発売から3年経過したスマートフォンでも継続的にOSアップデート、セキュリティアップデートを受けられるのであれば安心して利用できる。今の市場ではiPhoneがまさにいい例となり、発売から3年経過したiPhone 12を今から購入する選択肢も十分に考えられる。時間が経過してもなお中古価格も5万円前後で取引される背景には、長期のOSアップデートがある。

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シャープのAQUOS R8 proでは3年のOSアップデート、最大5年のセキュリティアップデートの提供をアピールしている

 

 その一方で、10万円を超えるスマートフォンで従来のような2年間しかOSアップデート、セキュリティアップデートが提供されない機種もある。これは製品寿命が短いことを意味し、昨今の利用シーン中では消費者に選んでもらえなくなる可能性が高いのだ。この他、ソフトウェアアップデートの回数や期間に対して言及がない機種について「不安」と感じる声もみられる。「アップデート期間」が消費者の製品選択において重要な項目になっているのだ。

 

 もちろん端末の価格やターゲット層もまちまちなので、一律3回のOSアップデートを行えとまでは指摘しない。iOSと異なりAndroid環境では、比較的古いバージョンでも大概のアプリは動作するようになっているため「最新バージョンでなければダメ」というシーンは少ない。最新スマホでもまともに動かないと指摘される「原神」でも、2014年配信となるAndroid 5.0以降のバージョンで動作する。

 

 その一方で、セキュリティ面の更新は極力最新のものを利用できた方がいい。過去にはソフト面の脆弱性によって端末保存データが第三者に閲覧されると言ったこともあった。このようなものが常に改善されるのであれば、利用者としては安心感が増す。

 確かにAndroid端末はハードウェアも製品価格もバラバラであり、低価格な機種では必要最低限のアップデートしか行わない機種も存在する。筆者としては、一般向けの製品かつ10万円超える商品については3回のOSアップデート、セキュリティアップデートも4年間は求めたいところだ。

 

 特殊な例外としては、高齢者向け端末などのターゲットを絞った機種が挙げられる。OSアップデートによるUIの変更などを理由に利用者に対して負担を強いる可能性があるため、あえてアップデートを提供しない機種もある。

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高齢者向け端末とはいえ、インターネットに接続されるデバイスなので、セキュリティアップデートは長期で提供して欲しいものだ。

 

 

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