先月のPixel 7aの発売からおおむね一か月が経過た。初の3キャリア展開となったことや日本向けに強気の価格設定としたことで市場でも高評価なスマートフォンとなっている。今回、筆者は自腹で購入し、一か月ほど利用してきての感想を含め改めてレビューさせていただく。
- 円安情勢でも攻めた価格で投入したPixel 7a。上位機種のPixel 7との違いもチェック
- 安価でも侮れないカメラ性能。AIによる強烈な補正が特徴のPixel 7a
- カメラ性能だけじゃない!Tensor G2搭載で基本性能の高さもしっかり備える
- きれいに撮れるカメラ!高いスペック!長期のOSアップデート!手ごろな価格!四拍子そろって多くの人にベストバイ
円安情勢でも攻めた価格で投入したPixel 7a。上位機種のPixel 7との違いもチェック
昨年発売の「Pixel 7」はAI性能などの強化によって、数々の新機能を備えるGoogleらしいスマートフォンに仕上がっていた。auやソフトバンクでの取り扱いもあり、市場でもかなり話題となったスマートフォンだ。そんなPixel 7のエッセンスを取り入れながらも、安価な価格を実現したものがPixel 7aとなる。日本市場では価格面にかなり力を入れての販売となった。スペックは以下のようになる。
SoC:Google Tensor G2
メモリ:8GB
ストレージ:128GB
画面:6.1インチ FHD+ OLED
90Hzのリフレッシュレートに対応
カメラメイン:6400万画素 f1.7
超広角:1200万画素 f2.2フロント: 800万画素
生体認証:指紋認証(画面内)
バッテリー:4410mAhワイヤレス充電に対応
OS:Android 13
直販価格:6万2800円
今回はcoralというカラーをチョイス。明るいオレンジ色が特徴のオンライン限定カラーとなり、フレームが艶消しのオレンジとなる点が印象的だ。
基本的にPixel 7aは純粋にPixel 7の下位モデルに当たる。上位機種に比べてハードウェア性能は一部抑えられているが、SoCにはGoogle Tensor G2を採用したことで「Pixel 7由来の機能」はそのまま利用できる点が特徴だ。Pixel 7と7aで明確に差があるポイントは以下の通りになる。
ディスプレイ
Pixel 7:6.4インチ OLED 90Hzリフレッシュレート
Pixel 7a:6.1インチ OLED 90Hzリフレッシュレート
カメラ性能
Pixel 7はメインカメラが5000万画素 f1.85 1.2μm
Pixel 7aはメインカメラが6400万画素 f1.7 1.4μm
バッテリー容量
Pixel 7は4614mAh
Pixel 7aは4410mAh
本体重量
Pixel 7は197g
Pixel 7aは193g
価格
Pixel 7は8万2500円〜
Pixel 7aは6万2800円
こうやって比べてみるとPixel 7と7aには差があるものの、Pixel 6シリーズのような極端に大きな差はなくなっている。本体サイズなどの差はあるが、他社の廉価グレードに比べると上位とコンセプトは揃えながらコストカットしていることを感じられる。
安価でも侮れないカメラ性能。AIによる強烈な補正が特徴のPixel 7a
Pixelシリーズの売りのひとつにカメラ性能がある。筆者も近年のスマホを買うなら、まずはカメラ性能からというくらいには注視している。Pixel 7aは廉価モデルなだけあってハードウェア性能は抑えられているが、前作からは大きく性能向上を果たした。
メインカメラはPixel 7で採用される5000万画素のものではなく、6400万画素のものになっている。画素の数字上はPixel 7aのほうが大きいが、センサーサイズや各種スペックを確認していくと、やはり上位機種のPixel 7のほうが優れている。
Pixel 7aはメインカメラと超広角の2眼構成だ。数字上は6400万画素と大きいが、基本性能はPixel 7の方が上となる。
近年の実売5〜6万円台の機種ではAQUOS sense7をはじめとして、カメラ性能に力を入れているものも出てきている。それらの機種と比較すると基本性能では見劣りする部分もあるが、Pixelは強烈な画像処理で劣るハードウェアをカバーしている。
何枚か撮影してみたが、標準カメラはPixelらしく強めの補正がかかるものだ。
等倍
3倍望遠
8倍望遠
Pixel 7aのズーム性能はデジタルで最大で8倍となる。デジタルズームとは言えどAI補正でディテールはしっかり残しており、画質の劣化も抑えていることに驚きだ。
夜景モードにて撮影したが、こちらも白飛びしたりすることはなく綺麗に撮影できている。
1ヶ月ほど利用して何枚か撮ってみたが、Pixelの写真はAI処理が入るので必ずしも「見たまま」には映らない。それでも、6万円前半の価格を考えると非常にきれいに撮影できる。被写体によっては少々やりすぎな補正をかける場面もあるが、フォトエディタや各種SNSアプリのフィルターを利用するとよい。
Pixel 7aはテレビCM等で大きな話題となっている消しゴムマジック、モーションフォトに加え、Pixel 7で利用できる「ボケ補正」も使えるようになった。手ブレした写真もある程度補正をかけられる点はありがたいものだ。
ぼく「飛行機撮れたはいいけど手ブレしたか。Pixel 7で補正するか」
— はやぽん (@Hayaponlog) 2022年10月29日
Pixel[クルクルクルクル🌀チン!]
ぼく「わーお」 pic.twitter.com/aX847OqKCC
カメラ性能だけじゃない!Tensor G2搭載で基本性能の高さもしっかり備える
Pixel 7aの最大の特徴は、Pixel 7と同等の性能をもつGoogle Tensor G2が採用されていることだ。これのおかげで、6万円台の価格帯では頭ひとつ抜けた基本性能の高さを獲得している。前述のカメラ性能にも大きく寄与しているものだ。
Pixel 7aは高負荷で知られる原神もある程度快適に動かせるくらいパワフルなものだ。同等価格帯ではiPhone SE(第3世代)くらいしかまともに動かせないだけに、高性能ぶりがうかがえる。Pixel 7同様のUFS3.1規格のストレージ採用もプラスに作用している。
既に出てるベンチマークでは、Snapdragon 888と同等くらいの結果が出ている。実際にいくつかゲームをプレイしてみたが、そんなに過度な発熱もなく普通にプレイできたのが印象的だった。
原神は最高設定でプレイすると少々もたつきを感じた。デフォルトの画質「中」であれば問題なく動作する。
Google Pixel 7a
— はやぽん (@Hayaponlog) 2023年6月7日
Tensor G2 メモリ8GB
ミリシタ 3D高画質 難易度MM
ノーツスピード195 タイミング:-2
6万円のスマホとしては十分すぎます。ゲーム側の最適化もある程度行われたので、これは良いものです。 pic.twitter.com/SpbQhYVUzn
リズムゲームのミリシタも最高画質で快適に動作した
このTensor G2ではAI処理の高さを売りにしており、恩恵として高精度かつ高速な文字の書き起こしやリアルタイムで出力される翻訳機能、写真の画像処理エフェクトなどが挙げられている。どれもPixel 7に由来する機能であるが、Tensor G2を採用したことで安価ながらも上位機種と差別されることなく利用できる。
続いてスマートフォン本体についてチェックしてみる。画面については6.1インチのOLED画面を採用。Pixel 7aでは90Hzのリフレッシュレートにも対応しており、メリハリのある映像を楽しむことができる。高リフレッシュレート対応はPixel 6aの際に感じた数少ない惜しい要素だったので、ここが改善されたことはありがたい。
また、指紋認証は画面内蔵タイプとなっており、安価でもトレンドはしっかりと押さえている。感度や精度については良好だが、手持ちのPixel 7 Proと比較すると認証速度の面でやや劣るように感じた。
ディスプレイは90Hzのリフレッシュレートにも対応だ
Pixel 7aは画面内指紋認証に対応。前作のような「認証できない」事例も少なくなってきている。
引き続き大きく話題となる消しゴムマジック、モーションフォトもデフォルトでしっかり備える。今作では「ボケ補正」も利用できるようになり、機能性にも磨きがかかっている。このように強力なAI性能を必要とする処理が可能なのも、ハイエンドと同様のTensor G2を採用したことで安価ながらも差別されることなく利用できる。
本体はステレオスピーカーだ。価格を考えれば十分なサウンドだが、ハイエンド端末や安価でもXiaomiのように重視している商品に慣れていると物足りなさは感じる。Pixel 4a(5G)やPixel 5aとは異なりイヤホンジャックは備えていない。
OS には Android 13を採用。各種最新機能も利用できるようになっているが、Android 12以降のAOSP端末では、ネットワークタブで1つにされているため、 Wi-Fiのオンオフ操作がやりにくくなっている点が惜しいところだ。
このほか、ワイヤレス充電への対応や通信バンドが拡充されるといった利便性も向上している。Pixel 6aのアップグレードにとどまらず、より上位のPixel 7に迫る機能面の仕上がりとなっている。
きれいに撮れるカメラ!高いスペック!長期のOSアップデート!手ごろな価格!四拍子そろって多くの人にベストバイ
Pixel 7aを使って感じたことは「Androidスマートフォンで迷ったらコレ!」と勧められる仕上がりのスマートフォンだ。その一方である意味で面白みがない、ワクワクしないスマートフォンでもあった。
端末のスペックや機能としてはものすごく無難にまとまっているため、イノベーティブな要素と呼べるものはかなり少ない。一度でも近年のハイエンドスマートフォンを使っていた方からすると、差別化要素はそこまで多くないため、性能以外では少々物足りなさは感じてしまう。
それでも、性能を考えたバランスの良さは特筆すべきで、多くの方がこの機種を利用して「不満」を感じる場面はかなり少ないと考える。筆者のようなマニアからは「ワクワクしない」と評されるくらいが、大多数のユーザーにはちょうど良いさじ加減に仕上がっているのかもしれない。
必要十分に綺麗に撮れるカメラ、ハイエンド機並みの性能、Googleらしい独自機能、安心の長期サポート、お求めやすい価格。どれをとっても不足なく、バランスよく仕上がっているスマートフォンだ。Googleに「iPhone SEのようなスマートフォンをつくってほしい。」という声を具現化したものといえば分かりやすい。加えて、超広角カメラや6.1インチの画面サイズ、90HzのリフレッシュレートはiPhone SEとも差別化されているポイントだ
そんなPixel 7aの強みは、基本性能の高さとアップデート期間の長さだ。前述の通りプロセッサはハイエンドのTensor G2を採用し、直販価格6万円台前半という価格を考慮したスペックについて不足はない。
防水防塵にもしっかり対応し、日本で需要の高いFeliCaにもPixel 6同様に対応する。加えて販路についても、直販以外にauとソフトバンクに加えてドコモでも取り扱いがある。初の3キャリア共通の取り扱いとなったことで、家電量販店やキャリアショップで実機を触って検討しやすい環境になっている。
Pixel 7aでは3年間のOS アップデート、4年間のセキュリティパッチ提供を明言している。日本向けには未定であるが、諸外国ではバッテリー交換等の修理サービスを拡充するなど、利用者に長く安心して利用できるような仕組みを整えている。
特に長期のアップデートと高度なAI 処理については「Google にしかできないスマートフォン」という仕上がりだ。かつてのPixelはNexusの系譜に近い「リファレンス端末」という側面が強く、最速かつ長期のアップデート以外の強みが少なかったのだ。
筆者も過去に色々なスマートフォンを使ってきているが、PixelはAOSPと呼ばれるかなりシンプルなUI、最新バージョンのOSをいち早く利用できるスマートフォンというイメージが強い。
そんな中でもPixel 7aはシンプルな操作系に最速のアップデート配信のみならず、AI機能を全面に押し出したカメラ性能や各種翻訳、変換機能などユーザー体験を向上させるGoogleらしいスマートフォンに仕上がっている。
そしてPixel 7aのハードウェアが持つ強みとして、本体が軽量かつコンパクトであることだ。193gと近年のスマートフォンとしては軽量な部類に入り、横幅もシェイプされていることから持ちやすい。
ただ上位モデルのPixel 7は196gと従来より軽量化されているため、比較するとずっしり詰まった感覚はある。
6.1インチでスリムな筐体で持ちやすい
そんなPixel 7aの惜しいところは一部アプリの相性の悪さ、Bluetoothイヤホンとの相性の悪さ、電池持ちの悪さだ。アプリの相性やBluetoothイヤホンとの相性の悪さはTensor G2に由来するものがあり、業界大手のクアルコム Snapdragonとは異なる仕様から来ているものだ。Pixelの特徴である「最新バージョンのAndroid OSが利用できる」ことから、数字が変わるメジャーアップデートから数か月はアプリの最適化がついてこない状態にもなる。
Bluetoothイヤホンとの相性も同様となり、クアルコムが推している「aptX」系の高音質な拡張コーデックが利用できないものとなっている。この辺りはLDACに対応しているものを利用するなどの選択で補えるが、選択肢は少なくなる点には注意だ。
これらはPixelという端末がある種のリファレンス端末であることから仕方のない部分ではあるが、利用、検討する側としても頭の片隅に置いておくとよいだろう。
バッテリー持ちについては、もともとPixel 7シリーズもあまり良いものではなかったが、Pixel 7aではバッテリーの容量が少ないこともあって電池は早く消費した。使用していないときの減り(セルスタンバイ時)も他機種に比べて多く、何も使っていなくても数%単位で減っていることもあった。
この辺りは通信キャリアの仕様や基地局との相性もあるようで、継続的なソフトウェアアップデート等で改善されるとありがたいものだ。
そんなPixel 7aの日本市場における価格は6万2800円(直販)となる。順当に上がったスペックや昨今の円安情勢を考えるとかなり攻めた価格設定となっており、背景には6万2900円で販売されるiPhone SEの存在が大きいものと考える。
ストア版では特典で1万円相当のストアクレジットの付与を行うなど、周辺機器や純正ケース等も揃えやすくなっている。上記のような面白みのなさもこの「攻めた価格」であれば納得できる。加えてキャリア各社でも「実質1円」などで展開するなど安価に利用できる場面も多い。
長く愛着を持って使いたいスマートフォン。近年のものは高騰傾向にある中、安価ながらも性能と長期のアップデートに不安のない1台として、Pixel 7aを検討してみてはいかがだろうか。