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京セラとFCNT(富士通)が撤退した日本のスマートフォン市場はどうなる?少し考えてみた

 京セラのコンシューマー向け携帯電話事業からの撤退、富士通(FCNT)の民事再生法適用による事実上の撤退から2ヶ月が経った。日本の携帯電話を支えた大手の撤退は市場に大きな穴を開けたが、この穴を埋め合う形で各社が動きを見せ始めた。

 

大手キャリアも4万円以下のスマートフォンに注力。富士通(FCNT)と京セラの抜けた穴は大きいことが浮き彫りに

 

 情勢の変化としては、キャリアと密接な関係で安価な端末を提供してきた京セラや富士通(FCNT)が携帯電話事業から撤退し、以前のように「日本仕様の安価な機種」を提供できなくなっている。

 

 特に大手3キャリアでベストセラーを記録したFCNTの「arrows We」は2万円台の価格ながら必要機能をギュッと詰め込んだことで、幅広い層から支持を集めた。京セラもワイモバイル向けの「Android One」ブランドの端末があったが、ここも大きな穴となった。


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日本でも100万台以上販売したFCNTのarrows We

 

 

 さて、ここで大手3キャリアが展開する4万円以下の廉価端末のメーカーをFCNTと京セラを含めてチェックしてよう。

 

ドコモ

サムスン、シャープ、ソニー、FCNT、京セラ※

 

au(UQモバイル向けも含む)

サムスン、シャープ、ソニー、FCNT、京セラ、Xiaomi、OPPO

 

ソフトバンク(ワイモバイル向けも含む)

シャープ、ソニー、FCNT、京セラ、Xiaomi、OPPO、ZTE、モトローラ

※高齢者、子供向け機種が中心

 

そのため、この大手2社が撤退したことによって生まれた穴は以下の部分となる。

 

・大手3キャリア共通で、2〜4万円台の廉価端末

・FCNT、京セラ共にシェアの強かった大手3キャリアの高齢者、お子様向け端末

 

 

 これによって日本での基盤が強く、安価なスマートフォンを提供できるメーカーはシャープ、ソニーとなった。どちらも京セラやFCNTが抜けた穴を着実に埋めるラインナップを展開している。


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ソニーのXperiaは2〜3万円台のAceシリーズを展開し、シャープも同様のAQUOS wishシリーズを展開している。

 

 サムスンはここ数年でドコモ、UQモバイル、楽天モバイル向けに廉価なGalaxy Aシリーズを供給しているが、それはグローバル版とは異なる日本独自の外観を持つ機種となっている。今後は各社向けに日本仕様製品をより積極的にアプローチするのではないかと考える。


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日本で発売されているGalaxy A23はグローバル仕様とは異なるものだ

 

 そして、この廉価帯に強いと言われる中国メーカー各社は「為替の壁」に阻まれている。急速に進んだ円安は「コストパフォーマンス」を売りにするXiaomiやOPPOにとって大打撃となり、新機種ベースに日本独自機能を盛り込むと高価になってしまうジレンマと戦っている。

 直近ではOPPOがReno9 Aを発売したが、実質的なReno7 Aの焼き直しに留まるなど、急激な為替変動による苦しさも感じ取れる。Xiaomiについても昨年のような勢いがあるかと言われると微妙だが、動きは感じられない


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焼き直しと言われたOPPO Reno9 A

 

FCNTと京セラの2社が抜けたことによる大きな穴。埋めるのはシャープ、ソニー?それとも中国メーカー?課題は「信頼性」か

 

 FCNTと京セラがスマートフォンから撤退したことで、各キャリアの端末ラインナップにも影響を与えたことは間違いない。

 特にラインナップ構成で厳しくなるのは中国系メーカーの機種をほとんど採用しないドコモとなるが、ここに再度中国メーカー各社がアプローチを仕掛けてくるか注目だ。

 

 auやソフトバンクについては、どちらもサブブランドの「UQモバイル」「ワイモバイル」側での競争が激化しそうだ。FCNTはどちらもメインブランドでの展開となったが、京セラはサブブランドでの展開が主となっていた。

 UQモバイルではシャープやサムスンの廉価端末を採用する一方で、京セラ製のAndroid One端末が販売されていたワイモバイルでは、入れ替わるような形でモトローラが供給先に加わるなど、早くも新たな動きがみられる。

 

 そのため、ドコモではシャープやソニーの端末が中心となる中、auやソフトバンクではこれに加えて中国メーカーの台頭がより顕著になってくると考えられる。

 

 そして無視できないものが高齢者、お子様向けのスマートフォンだ。「らくらくホン」「キッズケータイ」のイメージが強いこれらの機種だが、供給してきたのはそれこそFCNTと京セラになっている。

 この手のスマートフォンはキャリアの意向がかなり大きく反映された機種となっており、端末設計はもちろん、細かいUI/UX設計にも独自のノウハウが必要になってくる。

 これについて、現時点ではシャープが3キャリアに供給して実質的な後釜を担っているが、ここにはソニーやZTEなどの他社が割って入る余地は残されている。


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子供向け端末についてはかつて中国の「ファーウェイ」が参入していたが、米国制裁の関係から撤退。現在はおおむね京セラが供給していた。

 

 

 ここにきて、日本市場で存在感を大きくしてきたメーカーはモトローラだ。同社は廉価なSIMフリー機で注目を集めていたが、昨年にFeliCaと防水に対応させたローカライズモデル「moto g52j 5G」を発売。今年に入ってもFeliCa、防水に対応しながら価格を抑えた「moto g53j 5G」に加え、パフォーマンス重視の「edge 40」を発売するなど、日本向けローカライズも着実に行なっている。

 これに加えてプレミアムラインの「razr 40 ultra」も日本で投入するなど「上から下まで」の幅広いラインナップをそろえるメーカーとなった。


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moto g53j 5Gは一部スペックを抑えて価格を2万円台前半としたワイモバイル向けの「moto g53y 5G」もある。

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グローバルで展開している折りたたみスマートフォン「razr 40 ultra」も日本に投入する

 

 

 最後になるが、各社の情勢を考えると京セラ、FCNTが抜けたことで生まれた「空白地帯」を狙いに来るメーカーは少なくない。日本での基盤が強いシャープやソニーはもちろん、廉価帯は中国メーカーを含めたシェア争いが行われることだろう。

 特にキャリアへのアプローチも強めてきたモトローラやXiaomiなどの中国勢はもちろん、シャープやソニーも上から下までしっかりカバーするラインナップとしてくるなど盛り上がりを見せている。

 

 iPhoneやPixelといったスマートフォンが強い日本だが、キャリアを通して廉価な端末も存在感を示していることは事実だ。そこを強みとしていたFCNTと京セラが抜けたことによる後釜を担えるメーカーは多いが、このふたつのメーカーの強みは「ジャパンブランド」と言える高い信頼性とイメージだった。

 

 後釜と呼べるメーカーや新参の中国メーカーに「高い信頼性」「肯定的なイメージ」があるかと問われると難しいところはあるかもしれない。その辺も含めた消費者の意識も納得させられるような商品を展開したメーカーが、ある意味このセグメントの「覇権」を握るのかもしれない。

 

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