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【コラム】Nokia Lumia 1020がなければ今のカメラ特化スマホはなかった。Lumiaとファーウェイの関係を今だからこそ振りかえる

どうも

 

近年はグローバルトレンドからもカメラ性能が高いスマホが多く出ています。

 

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 シンバル搭載で夜間撮影にも強いすごいやつとか

 

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 1型センサー搭載の頭悪いスマホ(ほめてる)とか

 

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 100倍ズームできるスマホとか

 

 

が、これらが出てくるずっと前にいたある機種の存在を、

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皆さんはNokia Lumia 1020をご存じだろうか

 

 

Nokia Lumia 1020ってなに?

 

2013年7月11日 コードネーム「EOS」で一部マニアには知られ

発表会では「ZOOM.REINVENTED」の触れ込みで発表された総画素数4100万画素の非常にカメラ性能に特化したスマホです。もう8年も前なんですね...

 

www.gizmodo.jp

発表会当時の大手メディア記事を載せておきます。詳しいことはこちらを

 

まぁ、カメラ性能がえげつなく

 

4100万画素 1/1.5型センサー 26㎜ f2.2 Zeissレンズ

OIS(光学式手振れ補正) キセノンフラッシュ

 

今このカメラスペックを並べられても、見劣りしません。

 

2012年発売のNokia 808 PureViewの正統後継機...というかWindows Phone 8版と呼べる頭の悪いスマホ(ほめてる)です。

 

 

オーバーサンプリングで撮影する化け物だった1台。

 

今だからこそNokia Lumia 1020のカメラ性能のすごさを振り返ってみよう

 

この機種の特徴としては、常に4100画素(厳密には3800万画素)で撮影するわけではなく、7つの画素を1つのピクセルとして使用することでノイズを抑えるものだった。そのため、基本解像度は500万画素での出力となる。

 

さらにはバックデータで3800万画素と500万画素を同時に残すことも可能で、撮影後に拡大しても劣化が少ないようにすることも可能だった。

これがZOOM REINVENTED 「ズームの再発明」とも言われた所以だ。

 

 

 

2013年当時のSnapdragon S4プロセッサには4100万画素を扱えるISPはなく、Lumia 1020では独自のISPを搭載している。

このおかげで卓越したパフォーマンスを獲得している。

 

もちろん光学設計の優秀さ、OISがレンズシフト式の中でも当時としては効きがよかったこと。

マニュアル撮影の扱いやすさから現在においてもファンがいて、海外では毎度のようにカメラ画質比較の引き合いに出されるスマホだ。

 

 

 

 

 

写真のクオリティもなかなかと言える。

これが2013年のスマホと言われたらただただ驚くばかりだ。

 

 

ファーウェイから出てきたPureViewの後継機

 

Lumia 1020以降、オーバーサンプリングを用いた「真の後継機」がNokiaないし買収先のマイクロソフトから出ることは無かった。

そのマイクロソフトもモバイル部門を手放してしまい、スマホカメラで最強とも言われたPureViewを積んだスマホはもう出ない。

 

そう思われていた。

 

 

時代は下って2018年。

ライカと組んで着実に「カメラ性能重視」のポジションにいたファーウェイからP20シリーズが発表された。

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特にP20 Proのメインカメラである「4000万画素」という数字に見覚えがある人も多かっただろう。そう、あのLumia 1020を思い出させるものなのである。

 

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このP20 Proで使われたセンサーはソニーのIMX600というものだ。ファーウェイとソニーの共同研究、開発から生まれたもので他社製品には採用されていない。

 

サイズも1/1.7型と当時としては大きく、クアッドベイヤー配列を採用している。

 

このクアッドベイヤー配列を簡単に言うと「隣接4ピクセルを1ピクセルとして認識させることが可能な配列」というもの

 

いわゆるピクセルビニングと呼ばれる処理を行い、精細さを保ちつつ高感度でもノイズの乗りにくいものとして撮影するもの。

 

一般ベンダー向けにはIMX586が同等技術を採用しているが、製品出荷はP20 Pro発売後の同年7月となっており、いかにIMX600が蜜月な環境で作られたかわかる。

 

そして、このIMX600を最大限にチューニングできる技術力も求められた。

そこにはファーウェイのフィンランドR&Dセンターの存在が大きいという。

 

PureViewの開発者はどこへ行ったのか?nokian1865.wordpress.com

このブログを見るとわかるが、マイクロソフトがスマホ事業から撤退したのち、このPureViewに携わった方の多くがファーウェイのフィンランドR&Dセンターに在籍していたのだ。

 

フィンランドといえばNokiaのお膝元と言える土地柄だ。

2012年末にファーウェイはフィンランドに研究所を設けることを発表し、そこに5年で7000万ユーロという投資をした。

主にスマートフォン向け機能向上のための開発拠点と発表されている。

 

これは開発拠点としてもそうだが、時期的にはSynbianがシェアを落としてきて苦しいNokiaから優秀な技術者を獲得しようという流れだろう。

あわせて当時世界最高と言われたスマホカメラであったPureViewの技術者も取り込みたかったのがうかがえる。

 

確かに、地域に根差したやり方でファーウェイがPureViewの開発者を獲得できたのも納得ができるし、2013年のLumia 1020以降後継と呼べるモデルが出なかったことも納得がいく。

 

 

さて、開発側の要望も汲まれた高性能センサー、画像処理のアルゴリズムは自社チップで自由度の高い設計が可能なところ、ライカクオリティの高い目標、潤沢な開発資金、フィンランドでの開発拠点という環境。

 

Nokia上がりの技術者はこれ以上にない素晴らしい環境で開発し、結果としてP20 Proという後のスマホトレンドすら変えてしまったハードウェアを作ってしまったのです。

 

またロスレスズームもこの世代からかなり良くなったため、少なからずPureViewの技術も生きているのだろう。

 

クアッドベイヤーのセンサーを使ったある種のオーバーサンプリングや、このセンサーと望遠レンズを併用利用することで劣化の少ないロスレスズームを成し遂げるような点はさすがと言えるだろう。

 

実際、P20 Proは常に4000万画素で撮影するわけではなくサンプリングをかけて1000万画素にて出力される。

 

ブログ主がHUAWEI P20Pro PureViewと呼ぶ気持ち。とてもよくわかります。

 

多くのメディアは「ライカと組んだからカメラ性能が上がった」と報じるが、その陰には過去最高のスマホカメラの異名を持っていた「Nokia PureView」の開発チームの力もあったことを覚えておいてほしい。

 

そしてこのP20Proが無ければそれに続くカメラ特化スマホのトレンドもなかったことを踏まえれば、まさにAndroid版のNokia PureViewと言われるのも分からなくはない。

 

また、旧マイクロソフトのモバイル部門メンバーを中心に立ち上げたHMD GlobalからはNokia 9 PureViewというスマホが出ているが、こちらはコンピュテーショナルフォトグラフィに主眼を置いたもので、5つのカメラで得た情報を合成するというものでLumia 1020などとは異なる思想のものだ。

 

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最後に、今も生きるPureViewの意思

 

さて、現在のハイエンドスマホの多くが採用している高画素センサーはほぼすべてクアッドベイヤー方式を採用しているセンサーを使用している。

 

また、これを前後して中国のトップシェアを争うXiaomiやOPPOはファーウェイに続く形で「自社端末向けに最適化されたイメージセンサーの共同開発」に舵を切った。

 

Xiaomiはサムスンと組んで1億画素のHMXなどを開発、OPPOはSONYと組んでIMX766を開発している。どちらもクアッドベイヤー※と言える。

 

※クアッドベイヤーはソニーにおける名称で、サムスンではTetracell Technologyと呼ばれる。大体同じようなもの

 

これのおかげで近年のスマホは解像感と高感度性能を両立させ、性能を向上させている。

 

スマホのカメラの進化としてはモジュールがそのような進化を遂げるのはある意味順当だったと思うが、このクアッドベイヤーはある意味IMX600開発するタイミングでファーウェイから持ち出された提案も取り入れて開発されたのではという見方もできなくはない。

 

sumahoinfo.com

実際いくつかの情報でも「IMX600はSONYとフィンランドの研究所の共同で開発」というワードが出るくらい。フィンランドのR&DセンターにおいてNokia PureViewに携わったスタッフが何らかの形で関わっていたのが想像できる。

 

仮にもここでの共同開発のフィードバックが効いた一般ベンダー向けがIMX586、その技術を元に近年のSONYのセンサーが。それに負けじとサムスンが作ったセンサーが今は市場の多くを占めている※。

 

事実なら皆さんのスマホの中には8年前に最強のカメラと言われ、いまでは無くなってしまったメーカーの意思が形を変えて、様々なところで生き続いている事になる。

 

なかなか感慨深いものではないでしょうか。

 

仮にもあの時NokiaがWindows PhoneではなくAndroidを積んでいたら。

また違った世界線だったのかなと思う今日この頃です。

 

それでは

 

 ※日本ではみんな大好きiPhoneやSONY Xperiaはこのクアッドベイヤー配列のセンサーを意図的に採用していない。